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博多鋏唯一の手職人

高柳 晴一 Seiichi Takayanagi

博多鋏


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 「日本中探しても、鋏の職人はほとんどおらんのじゃなかろうか」と博多弁で話すのは、高柳商店代表の高柳晴一さん。博多鋏を作る唯一の職人だ。櫛田神社そばにある築120年の民家を工房にしている。博多鋏は使い勝手の良い万能鋏で、切れ味の鋭さが特徴。手入れを欠かさず大切に使えば切れ味は一生持続するという。同じ博多の伝統工芸で博多織や博多張子の職人も手仕事で博多鋏を愛用する。


 今から約700年前、南宋からの帰化人、謝国明(しゃこくめい)が博多に持ち帰ったのがルーツと言われる。当時は唐鋏と呼ばれ親しまれていた。「こういうものは、持ってくるだけでは残らないんですよ」と高柳さん。戦が絶えなかった中世博多の町には刀鍛冶が多く住んでいたため、彼らによって鋏が作られたと高柳さんは推測する。


 鋏を作るのに100近い工程がある。一人前の職人になるには、打つのに8年、研ぐのに8年、合わせて16年かかる。コークスを置いた火床(ほど)に空気を一気に送り込み、温度を千度まで上げ、ここに地金と鋼を入れ熱する。2つの鉄を合わせるため、真っ赤な火花を飛び散らせながら熱い内に叩く。鉄が冷めるまでの5秒が勝負だ。何度も叩き不純物が取り除かれ、質と強度が高い鋏の原型ができる。「職人の仕事は教えてできるようになるものではないんです。見て、試して、自分の体に覚えさせるしかない」と熱く語る高柳さん。

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 鋏は4寸、5寸、6寸の3種類。6寸(18cm)のもので8千円ほど。全ての工程が完全に手作業。長年の経験と感覚に頼るところが多いだけに、仕上がりの長さや厚さは微妙に異なる。「本当に納得できる鋏ができるのは、一日に1本か2本ですね。今、ここには在庫が一本もありません」と高柳さん。販売は全て予約制。注文しても納期は未定という人気ぶりだ。ハサミは100均で購入できる時代。日用品として考えると決して安いものではないが、技術の高さ、使い心地を体感すれば誰もが納得する。博多鋏が後世に受け継がれるためにも、一刻も早く後継者が出てくるのを願うばかりだ。

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