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その土地でしか作れないものを追求したい。上野焼・庚申窯三代目、高鶴裕太さん

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高鶴 裕太 Yuta Kozuru




上野焼 庚申窯 Aganoyaki Koshingama 三代目


陶芸家



庚申窯公式HP
http://aganoyaki.net/
住所/〒822-1102 福岡県田川郡福智町上野1937
電話/0947(28)2947


上野焼には一度途絶えてしまった歴史がある。高鶴家の先祖をはじめ地元有志により再興され、現在では20ほどの窯元が標高900.6m、登山客に人気の福智山麓に点在する。周囲に日帰り温泉も数軒あるので登山の汗を流して帰る人も多い。1971年に建設された庚申窯の三代目、高鶴裕太さんは横浜国立大学を卒業後すぐに窯に戻ってきた。陶芸家となり3年目の若手だ。周囲が就職活動を始める大学3年生の時に窯に戻ることを決意した。
「庚申窯では自分の好きな時に集中できて、好きな時に休める。その環境が魅力でした。他の仕事を経験してからという選択肢もありましたが、例えば10年外で働いたとして、その10年の創作の遅れは大きいと思いました」
と語る三代目。祖父や父からは自由にやらせてもらっている。弟子制度ではないのが三代目にとって大きかった。




庚申窯の大きな特徴は、初代で祖父の高鶴智山(こうづるちざん)さんと二代目の父享一(きょういち)さん、そして三代目の裕太さんという三世代の作風が異なる陶芸家が一緒にやっていること。祖父智山さんは模様を盛り付ける貼花(ちょうか、てんか)や透かし彫り、表面を削り模様を出す掻き落としなどの技法を使った細工が得意。庚申窯を開く前は花を栽培する仕事をしており、花をモチーフにしたデザインが多い。父享一さんはダイナミック、骨太。細工はあまりしない。ろくろを引いた時の手や指の跡をあえてそのまま作品に活かすことも多い。三代目は“日用品は使いやすさが一番”という思いから、持ちやすいかどうか、飲み心地はどうかなどに気を配ってきっちり作る。3人がそれぞれの作風を出しながら陶芸に向き合っている。親子三代の陶芸家が並んでろくろを回す姿などは、庚申窯ならではである。

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器作りは粘土作りから始まる。土を天日で乾かし木の根や石を取り除く。細かく砕き水に溶いて精製、さらに乾燥させてしばらく寝せる。できた粘土をろくろで成形し、乾燥、素焼き、釉薬や絵の具を塗り、本焼き、研磨・チェックという工程を踏む。全て手作業なので大量にはできない。本焼きについて少し説明をしておきたい。窯の種類だけでも電気窯、灯油窯、薪窯と3種類あり、使う窯によって仕上がりに特徴が出る。焼成にも酸化や還元といった技法があり、完全燃焼させる酸化焼成は仕上がりで本来の色が出せる。灯油窯では無理矢理燃焼させ酸素不足の状態にし還元焼成させることもできる。酸化に比べると還元は色の変化が出やすい。藤色になるのはこの還元である。年に2回、薪窯を使う。朝から火入れをし、古民家の廃材などを投入し翌日の昼までおよそ30時間焚き続ける。湿度、くべる木の種類や状態、窯の中に置く焼き物の位置や数など多くの要素が作品に影響するため完全に同じものは作れない。薪窯の作品は全てが一品作となる所以である。水で消さず自然に炎が消えるのを待つ。数日間放置し冷ますことで割れにくくなり、良い風合いになる。
「薪窯から出して仕上がりを見る時がたまらなく面白いですね。他の窯では出せない優美で奥行きのある色味が出ます。何回やっても自分の想像とは違ったものができる。それが薪窯の良さです」(享一さん)




器だけではなく、アート作品も作っている。
「陶器の仮面を作っています。仮面舞踏会で被るようなヴェネチアンマスク風の仮面や、バリの神や聖霊をモチーフにした仮面です。絵を描くのが好きなので壁掛け用の絵の陶板も作ります。アート作品の制作から日用品に還元できる技術もあります」(裕太さん)
今後、挑戦したいことも尋ねてみた。
「陶芸は鉱脈が広い。技術とか表現とか数年でやり遂げるのは無理なので時間をかけてやっていきたいです。上野焼の特徴や手作りでしかできないものを追求していきたい」(裕太さん)
また、他の工芸や窯元同様に後継者不足は上野焼も同じ問題を抱えることにも言及。
「上野焼の窯元には後継者がいないところもあります。陶芸に興味がある方がいたら、ぜひ一緒にやりませんか!?」と若き三代目は語ってくれた。(了)

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